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東京高等裁判所 昭和54年(行コ)79号 判決

控訴人(原告) 神戸與平

被控訴人(被告) 東京都知事

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和五一年七月二二日付で控訴人に対してした行政代執行に要した費用の納付命令を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上、法律上の主張及び証拠の関係は、次のように附加、訂正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

一  当事者の主張関係

(一)  原判決二枚目裏三行目に「本件命令には」とある次に「除却物件、その範囲の明示がなく」を、同三枚目表一〇行目に「なすことは」とある次に「裁量権の範囲を著しく逸脱したものであり」を、同枚目裏六行目に「同月一二日から」とある次に「同年八月一一日までの間に」をそれぞれ加える。

(二)  原判決五枚目裏八行目の次に「なお、代執行の対象となる物件及びその範囲は本件除却命令、本件戒告及び本件令書により既に特定されているから、これを明示することは本件令書の要件ではない。」を、同九行目に「着手した」とある次に「昭和四六年七月一二日の」をそれぞれ加え、同一〇行目に「その除却」とあるのを「その全部の除却」と改め、同六枚目裏三行目)に「であつたとしても、」の次に「控訴人が本件工作物を自ら取毀す手段として三木建設にその取毀を請負わせたのであるから、」を加える。

(三)  原判決八枚目表七、八行目に「或いは強度を増すためにI形鋼」とあるのを「あるいは強度を増すためにI型鋼」と改め、同一〇枚目表六行目に「までの間に自ら」とある次に「徐々に右青斜線部分に接続して」を加え、同裏九行目に「秋島建設より譲渡を受けたのはかんべ土地であり、」とあるのを「秋島建設から青斜線部分の覆蓋及び同覆蓋上の建物の譲渡を受けたのはいずれもかんべ土地であり(但し、秋島建設に対する財政的理由から、右覆蓋はかんべ土地、同覆蓋上の建物は控訴人の各所有名義としたものである。)、」と改める。

(四)  原判決の事実第四の二第一項ないし第三項をそれぞれ一項づつ繰り下げ、その前(原判決一一枚目表一行目の次)に次のとおり第一項を加える。

1  法令違背の「法令」には訓示規定も含まれるのであり、行政不服審査法第五七条第一項の規定が訓示規定であつたとしても、これに違反してなされた本件命令は違法な処分であり、取消を免れない。

二  証拠関係〈省略〉

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないものとして棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のように附加、訂正するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

1  原判決一六枚目表一、二行目に「不服申立制度の存在を教えることによつて国民の権利救済」とあるのを「当該行政処分に対して不服申立をすることができる旨、不服申立をすべき行政庁及び不服申立をすることができる期間を教えることによりその処分を受けた者の不服申立による権利救済」と、同四行目の「そのため」から同六行目の「別として」までを「右教示制度の趣旨にかんがみると」と、同七行目「行政庁の処分や裁決自体が違法となる」とあるのを「当該行政処分がこれを取り消すべき違法性を帯びることとなる」とそれぞれ改める。

2  原判決一六枚目表九行目に「本件命令は」とある次に「除却物件、その範囲の明示がなく実際に要した」を加え、同枚目裏四行目に「実際に要した費用の内訳を記載するまでの」とあるのを「実際の代執行に要した費用の額を記載すれば足り、その内訳まで明らかにする」と改める。

3  原判決一七枚目表五行目に「甲第三二号証、」とある次に「第三六号証、」を加え、同一一行目に「昭和四六年七月」とあるのを「昭和四六年七月五日頃」と改め、同一七枚目裏一、二行目に「三木建設において」とある次に「同月六日から」を加え、同三行目に「同年七月一〇日」とあるのを「同月一〇日」と改め、同一〇行目に「すなわち、」とある次に「本件河川は、都市計画事業決定に基づいて下水道幹線水路として利用されることになつていて、下水道幹線工事は既に着手されており、昭和四六年度中には本件現場附近の下水道工事を完了する予定でいたが本件工作物が右工事に支障をきたしていたところから、被控訴人は控訴人に対し、かねてから本件工作物の撤去を求めていた(なお、右撤去の対象たる本件工作物の中には本件覆蓋が含まれていたことは、後記判示のとおりである。)が、両者の話合いが仲々進展せず、前記のとおり、昭和四六年五月に至り、同年六月末日までに控訴人において本件工作物を撤去するという合意が成立したところ、控訴人は右期間の満了の日までにはごく一部の撤去しかなさず、三木建設に請負わせて本格的撤去にとりかかつたのは上記認定のとおり同年七月六日からであり、しかも、」を加え、同一八枚目表八行目に「恐れもあり、」から同枚目裏五行目に「ある。)。」までを「恐れがあつた。」に改め、同一〇、一一行目に「総合判断して、本件工作物全部の早急な除却が必要であるところ」を削り、同一九枚目表三、四行目に「売却引渡済みであつた旨主張するけれども、仮にそうであつたとしても、」とあるのを「売却引渡済みであり控訴人としては撤去の履行を完了した旨主張する。成立に争いのない甲二七号証の一、二並びに原本の存在及び成立に争いのない甲第三八号証によると、本件覆蓋上の建物の取毀後の残材は控訴人が三木建設に譲渡し建物取毀の請負代金の支払と相殺する合意があつたことが認められるが、そうであつたとしても、本件代執行に着手する時点で」と改める。

4  原判決二〇枚目表五行目の「解されるところ、」の次に「前掲乙第一三号、第二〇号証の一ないし五、第二一号証に」を加え、同六、七行目に「証言によれば、」とあるのを「証言を総合すると、」と改める。

5  原判決二二枚目表一行目に「成立に争いのない乙第七号証の四」とあるのを「成立に争いのない乙第六号証の三、第七号証の四」と改め、同六、七行目に「次の事実を認めることができる。」とあるのを削り、同枚目裏五行目に「本件戒告」とあるのを「本件除去命令」と、同二三枚目表末行、同裏一行目に「所有権を取得したと推認することができる」とあるのを「所有権を取得したものと認めるのが相当である」と、同裏八行目に「並びに同証言」とあるのを、「原本の存在及びその成立に争いのない甲第三六号証並びに原審における神戸勝次の証言」と、同九行目に「費用の一部についての請求書」とあるのを「鉄骨やコンクリートの購入に係る請求書」とそれぞれ改め、同二四枚目表三行目に「占使用料を」とある次に「品川区長を被供託者として」を加える。

二  よつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小林信次 浦野雄幸 河本誠之)

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